冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
「それはそれは……失礼しました。まさか、結婚していたとは思わなくて」
「お分かりいただけたのなら結構です。披露宴は先ほど終わりましたよね。ゲストの方はちらほらラウンジでお見かけしましたが、ホテルへお戻りになられますか?」
「……いえ。用が済んだので、今日は帰ります」
意味深な視線を向けられた後、宇一さんはタクシーの停まるロータリーに向かって去っていった。
姿が見えなくなって、肩の力が抜ける。
緊張した。どうなることかと心配したけれど、やっとちゃんと息が吸えるようになった気がするわ。
後ろに隠れた私へと振り向いた椿さんの表情は、クールながらも呆れた様子だ。
「ほら、もう大丈夫だ。敵は撒いたぞ」
「ありがとう、本当に助かったわ。まさか再会するとは考えていなくて、絡まれてどうしようかと思っていたところだったの」
「穏便に済んで良かった。それにしても、あんなろくでもなさそうな男と付き合っていたのか?」
痛いところを突かれて、何も言えない。誰の目から見ても、ろくでもなさそうに見えるのね。