冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
はっきり言うタイプの椿さんは、素を私に見せてからはいつでも正直なので、こういうときに濁して励ましたりフォローをしたりしない。
それが私にとっては助かるし、嬉しくもあった。
「五年前までは、彼に夢をみていたみたい。あまり良い別れ方をしなかったし、人を好きになれなくなったのも、あの人が原因なの」
つい、沈んだ声で答える。
楽しくない過去の話をしてしまって、気分を悪くしたかと思ったけれど、椿さんは嫌な顔ひとつせずに息を吐いた。
一瞬だけ、数回優しく頭を撫でられる。
予想外の行動に目を丸くした。ペットを可愛がるように撫でる間は無言で、クールな表情も変わらない。
「何?」
「怯えた顔をしてたから。よしよし」
「だんだん椿さんのことがわかってきたわ。子ども扱いでからかっているでしょう」
「ああ。怖がるより、そうやってムッとしていろ」
長い指が離れて、少しだけ寂しくなる。