冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした


 話を聞いている中で、講習会で宇一さんに会った記憶がよみがえった。

 おそらく、瑠璃川さんがリークしようとしたのはその話題だろう。あることないことを盛り込んで、密会と騒ぎ立てたかったのかもしれない。


「あのね、椿さん。実は、コンテストに向けた講習会で宇一さんに会ったの。余計な心配をかけたくなくて黙っていた……っていうのは言い訳だわ。ただでさえ出張で会えなくて不安定なのに、椿さんに誤解をされたくなくて、隠したの。ごめんなさい」


 すると、彼はまっすぐこちらを見た。


「嫌なことはされなかったか」

「うん。講習会でしか会っていないし、話もあまりしていないから、大丈夫だったよ」

「それならいい」


 あっさりとした返答には、私への信頼が伝わってきた。それは、仮面夫婦だからプライベートは好きにしていいといったニュアンスではなく、私に危害が及んでいないのなら気にしないという意味だろう。

 クールで自立した椿さんは、いつも必要最低限の会話しか口にしないけれど、言葉の節々から温かい気持ちが伝わってくる。


< 153 / 202 >

この作品をシェア

pagetop