冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした


「私、涙腺が馬鹿になっているみたい。嬉しくて仕方がないの。こんな日が来るとは夢にも見ていなかった」

「藍……」

「“お互いに本気にならない”掟を先に破ったのは私の方よ。だって、ずっと椿さんとこうなりたいって思っていたから」


 呼吸の瞬間に、勢いよく抱き寄せられる。

 背中にまわされた腕が普段より力強くて、少しだけ苦しいのが愛おしい。気持ちが溢れて止まらなくなる。

 出会ってから約半年。ようやく、私たちの仮面は外れたんだ。好きだと素直に伝えても良い。それが心の底から幸せで、感情の波が抑えられない。

 顔を上げた先で、至近距離に美しい顔が見えた。整った造形に見惚れる前に、熱のこもった視線に心を貫かれる。

 自然と頬に手が添えられて、身構える暇もなく唇が重なった。

 瑠璃川さんを挑発したときとは違う初めてのキスは、経験したことがないほど気持ちが良い。

 触れ合うキスから、だんだんと深くなる。唇を甘く噛まれたり、舌を柔く吸われたりするだけで頭がぼうっとした。

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