冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
職場の厨房を借りて、審査用のミニサイズのケーキであるヴェリーヌも練習してきた。
書類審査用の写真を撮って、送るだけだったのに、こんなことになるとは想像もしていなかった。
「手帳……」
つぶやきの後、スマートフォンを手にした彼は、どこかへ電話をかける。
「もしもし。今、時間はよろしいですか。至急、あなたに確認したいことがあるのですが」
ビジネス口調でやりとりをしている。相手は誰だろう。
「食事の店はおさえなくて結構です。プライベートの誘いではありません。まだ職場にいらっしゃるなら、こちらから向かいます」
短い電話を切った彼は、私の手を引きあげた。
「行くぞ。スーツのままでいいから、涙を拭いたらメイクで武装しろ」
「ど、どこへ行くつもり?」
「瑠璃川財閥の自社ビルだ」
瑠璃川財閥と聞いて、はっとする。金に近い明るい茶髪を綺麗に巻いた美しい女性が頭をよぎった。
「確証はない。あくまで可能性だけど、攻める価値はある」