冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
椿さんに連れられるがまま、黒いセダンに乗って、瑠璃川財閥の自社ビルまでたどり着いた。
アポ無し同然の来訪でビジネスでもないため、ビルに入れるか不安があったが、エントランス前で椿さんが電話をすると、すぐに自動ドアの向こうから見慣れた女性が出てきた。
私の存在に気づくと、ニコニコの笑みから一気に険しい表情になる。
高そうなブランド服を来て駆け寄ってきた彼女は、私には目もくれずに椿さんに一直線だ。
「椿から連絡が来るとは思わなかったわ。一体どうしたの?」
「確認したいことがあると伝えた通りです。手間は取らせませんので、今から少しだけ時間をいただけますか」
「もちろんよ。来客用のミーティングスペースを借りてあるの。ここじゃあゆっくり出来ないから、中へどうぞ」
促されて、従業員の専用エレベーターで応接スペースへ向かう。ミーティングスペースは、長机と椅子が並ぶオフィスの小さな一室だ。
扉を閉めた椿さんは、瑠璃川さんに向き合った。
「突然連絡してすみません。用件はすぐ済ませます」
「気にしないで。椿の頼みなら、なんでも聞くわ」