冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
相変わらずの盲目ぶりである。ひたすら私の存在を無視し続ける様に慣れてなんとも思わなくなったそのとき、椿さんの声のトーンがわずかに変わる。
「なんでも?」
「ええ。私は一途だもの。できることなら、なんでもするわ」
猫をかぶって甘い声を出す彼女は、にっこりと笑みを浮かべていた。
椿さんは、冷静な顔で本題を切り出す。
「それなら、正直に答えてください。瑠璃川さんは、アンジュの向坂さんと今でも関係がありますよね」
「恵麻って呼んでって言ってるじゃない。向坂とはただのお友達よ。椿の代わりにもならないわ。それが気になってわざわざ来たの?」
お友達ね。確かに以前、体だけの関係だと話は聞いていた。
レストランの一件で、私と椿さんの仲をかき乱そうと画策するくらいだから、頻繁に連絡を取っているはずだ。
「単刀直入に聞きます。あなたが藍のレシピを向坂さんに横流ししたのではありませんか?」