冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
椿さんの一言で、彼女は顔を歪ませた。
おもむろにスマートフォンを取り出したものの、写真を見せるのではなく、どこかへ電話をかける。
やがて、相手が電話に出た途端、彼女は初めて聞くほどドスの効いた声で怒鳴り始めた。
「あんたのせいで最悪なことになっているんだけど、どうしてくれるの? ちょっとした嫌がらせをするだけって話だったじゃない」
椿さんも私も、すぐに相手を察した。宇一さんだ。
電話口で口論になったらしく、彼女もヒートアップして止まらない。
「はあ? 勝手にやったって、全部こっちのせい? 私はあんたに邪魔をしろって言われたから、コンテストで使えないように潰してやろうとしたんじゃない……藍のレシピだとは知らなかった? 私まで切り捨てるつもり?」
瑠璃川さんは、一方的に電話を切られて、怒りで髪をかきむしっている。
「もう、あんな男どうでもいいわ! 全部あいつが悪いんだから!」
感情が乱れた瑠璃川さんは、振り切ったと言わんばかりに自白を始める。
目障りな私をどうにか罠に貶めようと考えていたところ、私が落とした手帳を拾った。
化粧室から戻り、椿さんに私が来ていたことを伝えてストーカー扱いするつもりだったが、一方の彼はお代だけ置いて出て行った後で、彼女は相当ショックだったらしい。