冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした

 苛立ちが抑え切れずに、ひとり残った店内で嫌がらせの提案をした際、電話越しの宇一さんが入れ知恵をしたのだ。


『良いものが手に入ったの。レシピだけ捨ててあげようか』

『いや、写真だけ撮って俺に送ってくれ。良いようにやるよ』


 単にメモを取っただけでは、頭の中にあるイメージでスイーツは作れてしまうため、先に世に出して、自作のスイーツを出す機会を奪うのが最適だと考えたのだ。

 その結果、瑠璃川さんはレシピを写真に撮り、現物は何も盗まず店員へ落とし物だと預けた。

 全て、宇一さんに仕組まれていたのね。加担した瑠璃川さんも許せないけれど、自分の作品を汚されたのが一番つらい。


「藍、どうしたい? いくらでも対応の方法はある。催事場の責任者に盗用の件を伝えて、アンジュの出店を取り消してもいい」


 その言葉に、首を横に振った。


「もう済んでしまったものは仕方がないわ。アンジュの限定ケーキだと楽しみにしているお客さんがいるんだもの。それに、あのレシピでコンテストに応募しても、明るい気持ちで作れない」


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