冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした

 椿さんは、私の返答を黙って聞いている。


「大丈夫。どこまでも卑怯な人たちに負けたりしないわ。私のスイーツは、コンテストで勝つためではなく、食べてもらえる人に届けるための品だもの」


 地位や名声に目が眩んで周囲を蹴落とすのをなんとも思っていない宇一さんには、正々堂々勝負をしたい。

 動揺して大切なことを見失いそうになっていた。代案を考えてきたときも、いつのまにか、『このケーキじゃ、宇一さんに勝てない』とまで思い込んでいた。

 私が戦うフィールドは、もっと高いところにあるべきだ。

 泣くしか出来なかった五年前とは違う。

 いつでも隣で力になってくれる椿さんがいるから。

 私の意思が伝わったのか、彼も小さく頷いてくれた。

 悪事がバレて穏やかではない瑠璃川さんに、椿さんがキツい表情で言い放つ。


「今回の件、俺は許しません。あなたには心底軽蔑しています。もう二度と会う機会もないでしょう。今後一切、俺たちに関わるな」


 ビジネスの縁を切られた前回よりも、ずっと厳しい対応だ。

 ミーティングスペースをふたりで出た後も、部屋の中から苛立ちの叫びが聞こえてくる。

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