冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
「これはね、椿さんをイメージしたの」
「俺?」
「うん。華があってクールで冷たい真っ黒な見た目で、かじったくらいじゃ苦いけど、中身は鮮やかな赤が似合う情熱と甘さがあるケーキ。ピッタリでしょう?」
断面は白いスポンジにソースの層が綺麗に重なっていて、酸味のあるムースはピンク色だ。
『自然』というコンテストのテーマに合うように、チョコレートケーキと同時に出す飴細工の作品は、咲き乱れる花と蜜を吸いにきた蝶を表した。
天に上っていく蝶が羽ばたく様子を、自分と重ねてイメージする。
これは、椿さんがいたから完成できたものだ。
「きっと、藍のスイーツは審査員の心に響くよ」
力強いセリフで背中を押され、ペストリーシェフのアドバイスも受けながら、コンテストに応募をした。
そして、一次審査の合否通知書が手元に届く。
結果は合格。各部門十名以内で選出される二次審査まで進むことができた。二次は都内の製菓学校で行われる実技審査であり、開催は十一月の下旬だ。
その頃、椿さんもラスベガスの事業が佳境を迎えていて、お互い目標に向かって仕事に打ち込む。