冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
言い終わる前に、玄関で抱きしめられた。子どものように、ぐわんと抱き上げられて息が止まる。
「すごいじゃないか! やったな!」
先ほどとは打って変わり、満面の笑みで私を見上げた椿さんは、廊下に下ろした後にもう一度強く抱きしめた。
じわじわと嬉しさが込み上げて、受賞の実感が湧いてくる。自分のスイーツが認められたことがなによりも嬉しい。
まだまだ上がいる現実を突きつけられたけれど、今回のコンテストに参加できて本当に良かった。
「椿さんがいてくれたおかげだよ。私だけだったら、一次に出品するのも諦めていたかもしれない」
「なにを言っているんだ。藍が頑張ったからだろ。パリでの実務経験も、カフェでの仕事も、全てが糧になっているんだ」
五年前、裏切られてアンジュを出た悔しさも無駄ではなかった。
今までの人生の経験が受賞に繋がったと思うと、やっと努力が報われた幸せで舞い上がりそう。