冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
その日を境に、私たちは週に二、三回は食事を共にするようになった。
会話は仕事の話題も多かったけれど、たまに趣味や他愛のない話もして、穏やかに時間が過ぎていく。
彼は日本で生まれ育ち、エレメンタリースクールに上がる年齢に達すると同時に父親の仕事の都合で渡米、アメリカの義務教育が終了する十八歳までニューヨークで暮らし、帰国生枠で日本の大学に入学したらしい。
そして、卒業後にランコントルホテルへ就職して、経験を生かすためにニューヨークを拠点に決めたそうだ。
あれほど英語がペラペラなのは、ほとんど外国で過ごしていたからだったのね。
「子どもの頃は、お父さんとは離れて暮らしていたの?」
「ああ。世界を飛び回る仕事人間だからな。血が繋がっているっていうだけで、親父だと思ったことはない……って、口が滑った。こんな話をしてもつまらないだろ」
触れたくないのか、すぐに話題を変えられてしまう。母親が辰巳と名乗っており、複雑な事情があるとだけ耳にしていた。
政略結婚で妻になっただけの私は、未だに彼の過去に踏み込めない。
『俺は、愛ってものに少しも価値を感じていないんだ』