冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした


 スイートルームで告げられたセリフが引っかかる。あんなに冷たくて寂しそうな表情をするのは、お父さんとの間に何かがあったから?

 モヤモヤを抱えていたとき、ふと椿さんが思い出したように口を開く。


「そういえば、今週の土曜に家を空ける。帰りが遅くなるかもしれない」

「プライベートの用事があるの?」

「いや、半分仕事だな。ホテルの得意先であるハルナホールディングスが主催のパーティーに招待されているんだ」


 ハルナホールディングスといえば、楽器・音響機器の販売や教室運営など各種音楽関連事業を展開する企業を複数傘下に持つ、業界では国内最大手の持株会社だ。

 久我ホールディングス側は、ホテルに併設されたイベント向けホールのスターホールを優先的にコンサート会場として貸し出しており、ハルナホールディングス側は国内外から集まった楽器奏者のためにホテルを予約してくれるというWin-Winな関係らしい。

 代表取締役社長である榛名 奏(はるな そう)さんとは、古くからの付き合いがあるようだった。


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