冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
「良かったら夫婦でどうぞって言われたよ。狭い世界では情報が回るのが速い」
「私も招待されているとは思わなかった。どうしよう、ちゃんと挨拶できるかな」
不安を口にすると、椿さんはさらりと答える。
「大丈夫。参加する必要はない。もともとひとりで行くつもりだったし、むしろ、藍は行かせられないな」
「妻として挨拶するのは迷惑?」
「そういう意味じゃない。……たぶん、帰りたくなるだろうから」
首を傾げた私を見て、「つまらない世界は知らないほうが幸せだろ」と誤魔化された。
彼は、そのつまらない世界にあえて飛び込むつもりなのだろうか。
招待が断れなくて嫌々参加するというわけではなく、単に私を連れて行きたくないといったニュアンスだ。
おそらく、久我ホールディングスにとって繋がりのあるゲストが多く出席するはずである。せっかく招待されているのに、ここで椿さんの妻になった私が不在なのは、良い印象を与えないのではないのかな。
新婚なのに不仲だなんて噂を流されても困る、と説得したところ、彼はしぶしぶ頷く。