冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
私が、彼の態度の理由を知ったのは当日だった。
会場はハルナホールディングスの本社ビルであり、参加を決めてから、椿さんは新しいドレスを用意してくれた。
詰襟と袖がスカラップデザインのドレスは膝下のロング丈で、エレガントな総レースが大人っぽいながらも可愛らしい。
深い青は華麗に見えるクラシカルなカラーで、黒のクラッチバックを合わせるととても上品だ。
裏地が青いペイズリー柄である漆黒のオーダースーツを着た椿さんは、一見シンプルながらもさりげないお洒落な遊び心を感じさせるコーディネートである。
あえて色味を似せた服を選んでくれたのが嬉しい。
ふたり並んで歩くと、周囲のゲストの視線が集まった。名の知れたホテル王が妻を連れてパーティーへ来たと知った人々は、皆、次々に声をかけてくる。
椿さんはいつもの営業モードで爽やかに対応していて、さすが一流のホテルマンと、つい眺めてしまうほどだ。
時々、外国語を話すゲストもいて、グローバルに活躍している彼の顔の広さに感嘆する。籍を入れただけの仮面夫婦なのに、祝福の言葉をかけられて、自分の笑みがぎこちない。