冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
振り返った先にいたのは、ラメが散りばめられた深いパープルのイブニングドレスをまとった女性だ。
照明でキラキラ輝くクリスタルのネックレスを胸元に下げ、髪をアップにまとめているため細い首のラインが白く映える。
宝石に負けないほどの美貌は、つい怯みそうになるオーラがあった。
「瑠璃川さん、でしたっけ」
「気安く名前を呼ばないでくれる」
暴言を見逃して声をかけたつもりが、敵意剥き出しで返されて体が固まる。
椿さんによると、歳は二十六らしいが、甘やかされて育った一人娘で、気分の起伏が激しく幼い性格だという。彼に、わがまま姫だなんてあだ名を付けられるくらいだ。思ったことをはっきりと言うタイプなのだろう。
つかつかと歩み寄ってきた彼女は、視線を逸らさずに威嚇した。
「椿に連れてきてもらったんでしょうけど、お飾りの妻なんでしょう? かわいそうに」
「お飾りの妻?」
「だって、椿がひとりの女に本気になるわけないもの。あなたも遊ばれて捨てられるうちのひとりよ。籍を入れたって、いずれ耐えられなくなるわ」