冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした
穏やかではない発言に眉を寄せた私に、彼女は饒舌に続ける。
「来るもの拒まずだった頃の彼を知らないでしょう? クールなふりして、寂しがりやで可愛いの。恋愛に嫌悪感があるくせに、人の温もりに飢えてる」
「一体、なんの話ですか?」
「忠告をしてるのよ。椿を好きでも、相手にされるはずがないってね。彼は非情な父親と一緒で家庭を顧みないタイプだから」
椿さんが決して触れようとしなかった過去が、暴かれていく。
「結婚したなら、椿の父親に会ったんでしょう? 彰嗣さんは椿の母親が名家の出じゃないからって籍を入れずに、跡継ぎのために息子だけ認知して利用しているの」
聞いてもいない情報がスラスラと飛び出して、ただ聞くしかできない。
「歪な家族の形しか知らない椿は、あなたを幸せにする気なんて少しもないはずよ。幸せな将来を期待しているなら、傷つく前にさっさと縁を切ったほうがいいわ」
私の方が彼をよく知っているんだから、と言わんばかりに、完全に勝ち誇った顔をしている。
瑠璃川さんのセリフが本当なら、椿さんが愛に価値を感じていない理由にも見当がつく。