冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした


 スイーツの搬入が終わり一息ついた頃、足が向いたのはチャペルだった。ゲストがいなくなったチャペルは自由に出入りができて、つい、中を覗きたくなる。

 白が基調のチャペル内は大聖堂のようなデザインで、深い色味を放つ綺麗なステンドグラスと、心に染み渡る重みのある音色のパイプオルガンが印象的だ。

 また、バージンロードには清楚な薔薇が何本も飾られており、その美しさにうっとりする。

 木漏れ日が差し込んでいて、とても綺麗だわ。私も、もし結婚式を挙げていたら、こういうところで白いウエディングドレスを着ていたのかしら。

 結婚に期待はしていなかったとはいえ、理想はあった。一生に一度しか着れない特別なドレスに身を包み、愛する人の隣に立つ。

 そんな夢みたいな素敵な思い出は、私の人生にはない。

 披露宴で見た夫婦は、とても幸せそうだった。穏やかで温かい家族に囲まれて、友人と楽しそうに歓談していたのが少しだけ羨ましい。

 もし、真宮の家に生まれなかったら、違う未来があったのかな。


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