冷徹ホテル王との政略結婚は溺愛のはじまりでした


 嘘、どうしてここにいるの? 本物?

 動揺が止まらない私に、彼はにこやかに声をかけてくる。


「久しぶりだな。ホテルの会場でネームプレートを見るまでわからなかった。俺を覚えているか?」


 あんなひどい仕打ちをしたのに、馴れ馴れしい。まるで仲の良かった人に話しかけるくらいのテンションだ。

 睨み返しながら、彼に答える。


「忘れるわけないわ。宇一さんは、なぜここに?」

「友人の結婚式があってさ。藍がランコントルホテルで働いているとは驚いた」


 まさか、今日のウエディングのゲストなの? こんな偶然があるとは想像していなかった。

 彼は、ブッフェの担当をしていた私を見つけ、わざわざ話をするために追いかけてきたらしい。

 戸惑う私をよそに、距離を詰めて肩を抱かれる。


「痩せて、一瞬誰だかわからなかったよ。綺麗になったな」

「触らないで。今さら何のつもり?」

「冷たいな。愛し合ってた仲だろ? 俺、今フリーなんだ。久しぶりに飯でもどうだ」


< 98 / 202 >

この作品をシェア

pagetop