佐藤さん家のふたりとわたしと。
自慢じゃないが俺は運動も不得意だ。全速力の結華に追いつくのはほぼ無理だった。

息を切らしながらプールサイドまでやって来るのがやっとで、ぜぇぜぇと胸を抑えながらまずは呼吸を整えた。
確かに盗んだ靴をどうするか?って言ったらプールが最適だと思いながら、そこは案外冷静だったがその場を止める余裕まではなかった。

「あんた大人しい顔してやることつまんないわね」

全速力で走って来たのに全然余裕の結華が眉を吊り上げてそいつに言い放った。

佐々木夏乃、俺に告白してきた奴だ。

あと隣には佐々木と仲が良い女子2人…名前は別にいいか。生徒Aと生徒Bだ。

「佐藤さん何探しに来たの?もしかしてこれ?」

佐々木がプールの上で結華の右足の靴を高く上げた。

「でも私たちが盗んだんじゃないよ、偶然落ちてたんだから」

そんなワケあるかぁっ

こないだ見た瞳を潤ませた佐々木とは大違い、うすら笑うような表情にでこっちを見ていた。

「あんたも性格クズじゃない」

おい待て結華、あんた“も”って何だ。それに含まれてるの誰だ。

「むかつく…っ!」

それにムッとした佐々木が靴を持った右手を大きく振りかぶった。

やばい、投げられる…!

結華の靴がプールの中に…!

その瞬間、ドカッと鈍い音がした。

「!?」


結華が佐々木の背中を思いっきり蹴った。


その場にいる全員がビックリした、結華以外の。
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