Hello,僕の初恋
「車椅子なんだけど、押してもらえる?」
「任せて!」
ベッドサイドに置かれた車椅子に、ノゾムくんがよいしょ、と飛び乗る。
左足以外はほとんど怪我をしているので、車椅子に移るだけで大変そうだった。
私は車椅子のハンドルを握り、前へと進む。
大きな楽器ケースを背負ったまま男の子の乗った車椅子を押すのは、思ったよりも力が必要だった。
「花音ちゃん、それ、ベース?」
ノゾムくんが私の方を振り返って、そう言う。
「うん。うちにいっぱいあるって、話したでしょう? 好きな楽器見たら元気出るかなぁと思って」
私の手に、ノゾムくんの柔らかい髪の毛が触れる。
それだけでドキドキして、駆け出してしまいたい気持ちになった。
心を落ち着かせようと、力を込めてエレベーターのボタンを押す。
「花音ちゃんは、優しいね。ありがとう」
ノゾムくんはそう言って、また前を向いた。
いつも見上げていた彼を、私は今後ろから見下ろしている。
ライブの時はステージの上で輝いている彼だけど、普段は普通の男の子なんだなぁ。
光が当たると茶色くなる髪は少しくせっ毛で、耳のところでくるっとカールしている。
頭の形が綺麗だなとか、耳たぶの形も好きだなとか、そんなことを思った。