Kiss Me Kitty! ~年下猫系男子とゆる甘アパート生活~
アスファルトの地面にパンプスの音が響く。迷路のような小道に入り、曲がり角のたびにいくつものカーブミラーがそそり立っていた。
あそこにも。ここにも。
そのうちのひとつになにかが映った。
(えっ……?)
立ち止まって、目をこらす。
しかしそこには暗い夜道以外にはなにも写っていなかった。
すべてのミラーには同じ闇が写っているだけ。
(勘違い……?)
周囲を見回してみるが誰もいない。ドクン、ドクンと波打つ心臓が鳴り止まなくなる。
走ったせいでここがどこだかよくわからなくなり、出口はわからず、風の音しか聞こえない。
比菜子は立ち尽くし、荒くなる呼吸を整えようと「ハァ、ハァ」と息をして肩を上下させた。
振り向くと、そこにはさらにカーブミラーが立っており、くっきりと、電柱から覗く黒い人影が写っていた。
「ひゃっ……!?」
見ていられなくて顔を覆い、足を折ってしゃがみこんだ。
(怖い、怖いっ……誰かっ……)
すると背後から〝タッタッタッタッ〟という足音がすごい速さで近づいてきて、それは比菜子のすぐそばまで迫り──
「比菜子!」
(えっ……)
二の腕を掴まれて引っ張られたかと思うと、立ち上がった先にいたツカサの胸の中に収まっていた。