Kiss Me Kitty! ~年下猫系男子とゆる甘アパート生活~
ご機嫌な比菜子を、ツカサは猫のような瞳でじっと見つめている。
(それにしても、こんな血統書がついてそうなイケメンくんが、なんでボロアパートに……?)
「浅川さん」
考えを巡らせて首をかしげたところで、高くも低くもない中性的なツカサの声が比菜子を呼んだ。
「は、はい!」
「俺、J大生なんですけど……浅川さんもですか?」
「へっ……」
比菜子はガンとお菓子の缶を落とし、瞳を潤ませた。
J大とは最寄りの地下鉄で五分のところにある大学で、奥の院生たちもそこの学生である。
(私、大学生に見えるってこと!?)
二十八歳の貧乏OLは脚をカクカクさせて歓喜し、缶を拾いながらわずかに小躍りする。
「や、や、やだもぉ! うふふ、若く見えるかもしれないけど、私はアラサーの社会人ですよぉ」
ツカサが年下の大学生だと知った比菜子は、おばさん心を発揮し急に馴れ馴れしく変貌する。
しかし、変貌したのは比菜子だけではなかった。
「……は?」
借りてきた猫のようだったツカサはその眉をゆがませ、三白眼になって睨む。
「オバサンじゃねーか」