籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】
彼に近づくと急に手を繋がれた。

「ええ…?!」

咄嗟にそれを拒もうとしたが既に私の左手は彼の大きなそれによって包み込まれている。
孝太郎とも手を繋ぐ頻度は高くはないのに…―。

「行こう」

 慌てふためく私の感情を無視するようにぐっと引き寄せられ全身に力を入れなければ彼の胸の中に引き寄せられるところだった。
和穂さんは千佳を一瞥するとそのまま踵を返して私の手を引いた。

「か、和穂さん!」
「何か問題でも?」
「問題ありまくりです!会社近くでこんなことしないでください!誤解されます」

彼の足が止まる。

彼にぶつかりそうになり全身に力を入れて見上げた。
黒曜石のような美しい瞳が私を映す。一瞬その輝きにぼうっとしていた。

「誤解されて困ることでもあるのか?どうせ俺たちは結婚するのだから隠すことでもない」
「…それは、」

 言い返せずに口籠ると彼は私の手を引き運転手付きの車の後部席に二人で乗り込んだ。ようやく手が離されたというのにドキドキが止まらない。

「夕食はどうする?」
「私が作ります。部屋を貸してもらっているので」
「その契約はもう無効だろう。夫婦になるのだから」

 足を組み窓の外に目をやる彼にこっそり視線を送り、いずれ夫になるであろう彼のせいでこんなにも心拍数が上昇する。
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