籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】

「…何か食べたいものはありますか?」
「そうだな…君が作るものなら何でもいい」
「じゃあ、鍋でもしますか?したことあります?」
「もちろんあるよ」

 常盤物産の息子なのだからどのような食事を好むのかわからない。
どうせなら喜んでほしいと思っているし、これから夫婦になるのであれば距離を縮めていきたい。

「そういえば、あの総務の子が君の元婚約者の浮気相手だよね」
「っ…」
「正解か。何となく君の反応でそう思った」
「そうですか。藤沢千佳は孝太郎と付き合っているようなので…幸せなら別にもうどうでもいいです」
「はすみはどうなんだ。俺との結婚は嫌かな?」
「…それは」

 窓の外に向いていた瞳はいつの間にか俯く私へ移動していた。
絡み合うそれに自然に口数が減る。嫌というわけではないが、突然のことに戸惑っている。

 どうせもう決定事項ならば彼とうまく関係を築きたいと思っていることは確かだ。

「運命の相手じゃないから?」
「そんなことはありません。私は、この結婚話は了承しましたし、それに、」
「それは家のために、だろう。君は言っていた、運命の相手がいると信じていると」

普段は穏やかな雰囲気なのに、一瞬で真剣な目を向けられ雰囲気が一変する。

「まだ元カレが好きなのか?」
「それはないです!本当に…」
「ふぅん、そうか」

不敵な笑みを浮かべる彼はすっと私の顎を掬った。
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