籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】
目を見開き、固まった。瞬きの回数が増え目を白黒させる。
「まぁいい。この結婚はこのまま進めさせてもらうよ」
「分かっています…」
車が停まり、マンション前に到着する。
運転手の人にお礼を言って二人でマンションに入る。食材の買い物はコンシェルジュに和穂さんが頼んでいた。

…―…


 今日の夕食はミルフィーユ鍋になった。(私が食べたかったから)

この間までとは違い、結婚相手となると変に意識をしてしまい上手く話が出来ない。

「とても美味しいよ。ありがとう」
「いえ…あの聞いてもいいですか?常盤家の方から縁談話があったそうなのですが、それって…」
あぁ、と思い出すように頷き箸を持つ手を止めた。
体を射抜くように見据えられると目を逸らしたくなる。

「それは俺から両親に伝えた。元々別の見合い話が来ていた。結婚に関しては政略結婚をすることはわかっていたし正直誰でもよかったからその話を呑む予定だった。だけど、偶然ロンドンで君に再会した。最初はもちろん気づかなかったが、名前を聞いてすぐに思い出した。あの見合いをすっぽかして逃げた子だって」
「に、逃げたって…」
「本当のことだろ?」

 目の前ある白い湯気を立てる鍋のように全身が沸騰しそうだ。
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