僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
episode、8 ズレゆく愛

どうしてもできない事


《今、若者に大人気のロックバンドーーーーーのボーカルRYUさんに新恋人発覚のスクープが入りました――――…。

恋人らしき女性は―――、しかし以前に、ある男性との付き合いが噂されており—―—…そのS・Kさん(仮名)と一緒に知人が集まるクラブデートでキスを――・・・しかし、事務所からは、彼は同性愛者ではないと断言しており…》

***

そんなニュースがワイドショーを騒がせたのは、俺があのマンションに住み始めて2年目のことだった。


***

そのバンドボーカルのRYUは、いつかのライブハウスのバイトの時に大遅刻してきたやつで、思わずリモコンを持ったまま固まる。

”けいが放してくれなくてよ”って、あの時たしかに言ってた。


S・Kさんって
ケイのことだったりして

篠原(S)(K)・・・・。



あの頃はあり得ないと思ってたけど、あのイニシャルは仮名じゃないって思えてしまう。

「祐ちゃん、コーヒー出来た?」
「ん、どうぞ」
「わー、ありがとう!~~~ん~!やっぱり祐ちゃんの淹れてくれたコーヒーは絶品だね!」

ほのが可愛いから、ありがとうのキスをした。

そうすれば喜んで、カップを持ったまま隣に座ってと席を開けてくる。

「今日、紫音帰ってくるね。晩ごはん、どこかに食いに行く?」

「ううん、作るから。うちでまったりしよう。紫音君もそのほうが気が休まると思うよ」


「そうか…、んじゃあ、おれも手伝うよ」
「えー、それ本気?余計な仕事が増えそうなんですけど」
「ひっどいなー。少しは戦力になってるでしょ?」
「1ミリもなってないよ」

「…厳しいね」

「うそうそ、後で買い物付き合ってね」

「うん」

「祐くんの苦手な甘ーいケーキも、紫音君に焼いてあげようか?」

「俺は食べないけど、紫音が喜ぶね」

「さぁ、そうしたら早く行こう!スポンジを早いうちに焼いといて冷やさないと」

「ん、わかった。」


俺たちは三人での暮らしが当たり前になっていた。
この関係は極めて良好で、いいバランスに思える。

言い合いや意見の食い違いがあっても、第三者の目があるから長引くことはないし、誰かが仕事やプライベートで家を空ける時があっても、一人きりになる夜はほとんどなくて、本当に幸せで穏やかな世界だった。


ただ一つ、大きな問題があって、その問題はいつになっても解決することはなかった。

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