僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
「なんかさー、リュウ終わってね?」
「あー、俺も思ったぁ。女子うるせーし、新曲もなんかダセェしよ」
「あーそれ、最近リュウ作ってねーって話」
「マジで?なに、ゴースト?」
「だって話よ」
「うっわー、ないわ、冷める」
そんな会話が聞こえてきたのは5公演を過ぎたときの事。
数年前、態度はふてぶてしかったけど、会場にいたほとんど男子が騒ぎ立てるようなライブをしていた印象があった。
それはオーラみたいなのが目に見えるような景色で、その時、確かに『リュウ』は会場を支配していた。
でも、久々に見たライブでの彼は、どこか心ここに在らずって顔をしていたのは俺にもわかる。
それだけじゃなく、全体的に聞きやすい音に変わっていたようにも思える。
前は凄く凝って音を作っていたのが印象的だったのに。
シンプルイズベストとは言い難いような、売れ筋っぽいコード進行だった。
楽屋周りを巡回している時、近くのプレハブから怒号のような声が聞こえる。
話の内容まで聞こえないけど、出演者はほぼお祭り気分で浮かれてるのに、気の毒なバンドだなって思えて
何となく楽屋の入り口に貼ってあるアーティストを確認したら、「リュウ」のバンドだった。
思わず近くで聞き耳を立ててしまう。
「おい、待て。話おわってねーぞ。どこ行くんだ!リュウ」
「うっせ!探すんだよ!」
「だめだ!行くな、リュウ。契約忘れんな。」
「んなの知らねーよ。俺には「慧」が必要なんだよ」
「おい、声落とせよ。誰に聞かれてるか分んねーんだぞ」
「そんなの、一番どうだっていい」
「なにいってんだ、お前らにいくら宣伝費をかけたと思ってるんだ。それに今度の———」