僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
学校が始まって、それなりに友達も出来て、土日は贅沢すぎる社会勉強もさせてもらう。
もう、あの土地のことを想うことは少なくなってきたけど、時々あいつらや紗子から連絡が来る。
俺が野球教えてた子らは、地区大会で優勝したらしく嬉しそうな顔してる集合写真を送ってくれた。
紗子はめでたく第一子を産んで、海生と名付けたらしい。
湊斗君が好きだった海で生きるって意味なんだってすぐ分かったけど。みをの”を”はなんで”お”にしなかったのか。
気になるけど、返信はしないことに決めていた。
おバカな紗子のことだ。”を”と”お”を間違えたんだろうって解釈することにした。
「ねえ、鮫島君。これからご飯食べに行かない?」
「うん、いいよ。誰と?」
「え・・・私一人だけど、ダメ?」
「あー…、うん、わかった」
専攻に入ってからこうやって誘われる。
中には食事で済まなそうな時もあるけど…。
「ここ・・・入っちゃおうか?」
「あ―――ごめん、帰る」
「えー?最近いい雰囲気だったからいいと思ったのに、奥手男子?」
「うん、そうかも…ごめん」
こんな毎日の中で、新しい恋をする気になんてなれなかった。
どこから来てるのか、俺の心の中は喪失感でいっぱいだった。
経験を積み、知識が増え、新たな友好関係を誰かと築いていっても、その穴は埋まらない。
昔の俺を知っている奴がいない環境で、俺は新しく人格を作って生きていくんだろう。
なんだかそれが、とても侘しく思えていたんだ。
その時の俺もやっぱり普通じゃなかったんだと思う。
弱みを見せれる人がいなさすぎたんだ。