僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
「ああ、おかえり」
あの後、時間をずらして帰ったら、林檎はいつも通りに台所に立っていた。
「ごめんね、私も今帰ったところでさ、簡単な物しか作れないけどーっ」
そう言いながら出てくるのは、そこそこ手の込んだ料理。
きっと今日の予定を考えて、事前に下ごしらえしていたんだろう。
彼女は意外にこうゆうところがマメで、金銭感覚もしっかりとして生計を立ててくれていたから好感を持っていた。
今日のごはんだって、いつもだったら嬉しいはずなのに、なんだかその湯気立つ料理が腹立たしくてしょうがない。
あの男と会う予定があったから、下準備していたんだろうなと思えて。
「そうゆう割には随分と出てくるな」
嫌味のつもりだった。
「へっへ~、そうでしょう?これでも資格あるからね」
いつものように笑顔を浮かべて話す林檎の表情には、罪悪感の欠片もなくいつも通り。
瞬時に無理だなと思った。
こうやって俺は騙されていたんだなって。
いつから?俺は騙されていたんだろう?
・・・もしかして・・・。
他の男とヤって、その後・・・俺ともしたこともあったんじゃないかって思ったら、背中に悪寒が走る。
尽くしてくれていたのは、他の男に抱かれたってことを悟られないため?
ああ、やばい・・。超絶キモイ・・・。
濃い化粧も、爪のネイルも…バサバサなつけまつげも…。
今まで許容範囲だったところすべてがまともに見えないくらいキモくなってきた。
「どうしたの?食べないの?」
「・・・今日はカップ麺な気分」
「ふーんだ、いいもんね~。一人でぜーんぶ食べるも~ん!」
俺の心情も知らず、目の前で幸せそうにご飯を食べている林檎が、気持ち悪く見えてしょうがなかった。