僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
島くんはとても儚げにほほ笑む。

最初はその表情に惚れたけど、その中に悲しみを隠し持っているのに気づいたのはだいぶ後だった。



彼は、夕暮れ時になればよくその表情をする。

「島くん?」

話しかけちゃいけないようなオーラはある。

今だってこの街を一望できる丘で、寂しそうに夕焼けを見ていたから。

「ん?」

「どうしたの?ボーっとして」

「ああ、綺麗だなって」

まあ確かに。ここから見える情景はとても美しい。

中世の時代の面影を色濃く残しているし。


「ここは俺が知らない土地だし、この景色も心のモヤモヤが浄化されるようなんだけどさ…。夕焼け空って、どこに居ても変わらないよね」


どこか、それが故郷を恋しがっているみたいに聞こえて胸が苦しくなった。

故郷というか・・・ハルを、恋しがっているんじゃないかって。


「詩安?」

「ーーーん?」

「悲しそうな顔。どうしたの?」

「・・・そう?」

「うん。泣きそうな顔してるよ?」

「泣かないし…。島くんがさ、どこに居ても夕焼け色は変わらないとか、言うから」

「え?」

「母ちゃんもよくそんな事言ってたんだ。あまり時差のない国へと仕事に出てる父ちゃんを想うように、”父ちゃんも今ごろ同じ空を眺めているだろうかねぇ?”って。なんかそれ思い出したら切なくなった」

「アハハ、かわいい。そうか、詩安はお母さんっ子だったのか」

「んなわけあるかい」

なんて強がるけど、母ちゃんは俺の永遠の理想像だ。

あんな風に強い人になりたいっていつも思ってる。


『そろそろ帰ろうか?』

そう言おうとした時だった、背伸びした島くんが俺の首に腕を回してキスをしてきたのは。

呼吸が―――止まるかとおもった。

俺を慰めるように、彼が何度も唇をあててくる。

慈しむように優しく柔らかな唇に何度も触れ合った。


その日の夜、俺たちは初めて一線を越えて身体も気持ちも繋げあった。


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