僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
「あ!っっの!ち、違いますぅ!共通の趣味を持った者同士で、今日はその、そのっ共通の趣味でテンションが上がって、打ちあがってるような、———そんな感じで!こ、恋人なんて―――、———とんでもないですから!」
穂香、すっげー動揺してるし、…何気に俺との関係を否定してる?
紫音先輩はその顔をみてニヤニヤとしていた。
慌てふためく彼女を挑発するように見るというか・・・。
そうやって見る対象にはいつも理由がある。
穂香もその『対象』になったっぽいな・・・
「ごめんごめん。最近女嫌いになりかけて、誤解しちゃった。『ユウシ』のお友達だったんだね」
そう言っては、さっきとは違う顔つきになって、面白そうに俺の顔をチラ見してる。
「よろしくね」
紫音先輩が握手を求めると、穂香はおずおずと手を出していた。
「末永く――――」
やっぱり、そうかと落胆しそうだった。
先輩がこんな笑顔を浮かべるということは、そういうことだ。
性の対象として女性を狙っている時、先輩はそういう目つきになるんだ。
「はい・・・よろしく、お願いします?」
俺の目の前で繋がれた手を複雑な思いで見つめる。
いつか、穂香は紫音先輩に奪われるのだろう。
穂香だって、こんな男性に口説かれたら、秒で堕ちるはずだ。
有名企業に内定をもらって職も安定していくだろうし、それに加えてすっげーイケメンだし…。
なにより、紫音先輩は普通の男性だ。
穂香だって普通の女性。
そんな二人には何も障害がない。
とても勝てる気がしなかった。
まだ起きてもいないけど、未来を想像したら不安が頭から離れない。
やっと手に入れた温もりを、この人に奪われてしまうんだと。