エリート弁護士は契約妻と愛を交わすまで諦めない
英里子だ。
プライドが高く、相手と衝突しても引き下がらない、勝気な性格。
大学生の頃、私が新歓コンパで馴染めずにいたら男性に「暗い」失礼なことを言われた。笑って流そうとするのを、偶然隣席にいた彼女が「あんたのほうが失礼で陰湿」とマシンガンで倍返ししてくれた。それが英里子との出会い。私は言いたいことがはっきりと主張できる彼女のことが羨ましくてかっこよく思えた。
それがいつからだろう。どこかに棘が含まれるようになったのは。宏尚を紹介したのだって、何か裏があったかもしれない。今となっては探る気も起きないけれど。
英里子は私の前で立ち止まった。
「あんた、宏尚と付き合ってる時からもう他の男に乗り換えるつもりだったのね」
「違う」
「嘘つき。あんたは早々に次の男にいける性格じゃないでしょ」
「それをわかっていて、あんなことしたのなら神経どうかしてるわ」
「確かに奪ってやろうとは思ったけど、宏尚はすぐこっちに靡いたわよ?いつも愚痴を言ってね。『柚瑠はいつも忙しいばかりで面白くない』『あいつはとろくて気がきかない』って。まさか、そう思わせてすぐ別れやすいようにしてたなんてね」
「だから、二股なんてしてないって」
私の言葉に耳を貸さない。英里子にとっては私の意見なんて関係ないのだ。ただ、私を貶めて自分を正当化したいだけ。
もちろん、一緒にいて楽しい思い出もある。いろいろつらいことがあっても慰めてくれた。鼓舞してくれたのも彼女だった。でも……。
「最初から奪う目的で彼を紹介したの?」
「そうよ。っていうか、大学の頃から、あんたのこといいなとか言う男は全部私が落としてやった。最初口ではあんたのこと可愛いとか言っても、結局私に流れて、滑稽よね」
「どうしてそんなこと……」
わざわざ私に気がある人まで手を出すなんて。執念じみたそれに怖気が走る。
英里子は一呼吸大きく吐き出すと、腰に手を当てた。
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