エリート弁護士は契約妻と愛を交わすまで諦めない
「あんたみたいな子嫌いなの。何も努力せず笑って男に寄りかかればいいと思ってる。いざ男を取られても何もできない。また違う男に寄生する害虫みたいな。庇護してもらうだけの女、見るだけでうんざり……」
「そういうのを言いがかりっていうんだよ」
それは英里子のナイフみたいな台詞を遮る形で飛んできた。振り返れば朔が立っていた。
「あと盗人猛々しいか?」
私の隣に並んだ彼が軽く首を傾ける。
「朔」
「アレクはうるさいから適当に置いてきた。帰ろう」
いつからいたのかと問う前に朔が言う。優しい眼差しから冷徹なものへと変わった彼は英里子をまっすぐ見据えた。
「柚瑠は別に男に媚びて寄生する女じゃない。ちゃんと他人のために踏ん張れる優しさと強さがある。まぁ自己中心的な思考の持ち主には到底理解できない代物だろうけどな」
朔の言葉に胸が締め付けられると同時に瞼が熱くなる。こんなところで泣いたら、せっかく庇ってくれているのにだめだ。込み上げてくる嗚咽を奥歯で噛み殺した。
「それに柚瑠にはもうクズ男なんて必要ないから、せいぜいあんたが面倒みてやればいい。彼女の悪口を平然と他の女に漏らす男にどれほどの価値があるか、考える前に答えは出ていると思うが」
痛い部分を刺されたのか、英里子の顔が苦々しく歪む。普段美しく、泰然と佇む彼女から言葉が出てこない。朔の流れるような口述が的確に彼女の弱い部分を貫いている。
このまま立ち去ってもよかった。でも、私から最後に彼女へ伝えたいことがある。
「英里子、私はあなたのことすごく羨ましかったし、尊敬していた。だから、こんな形で終わってしまうことになって残念だわ」
「偽善者」
「そうでもないよ。本当にあの時怒りと悲しみでポキっと折れちゃったから、私。あなたのこと今でも許せない。でも、またちゃんと立てるようになった。失った時間は戻せないけど、だからといって過去に構っていられるほど暇でもないの」
朔が立ち直るきっかけをくれたから。それを無駄にすることだけはできない。だから、怨念やら執着やらはここに置いていく。
英里子は黙って私を見つめていたけど、やがて駅のほうへ去っていった。私たちもホテル側へと歩き出す。
「ったく、クソ男にふさわしいほどのクソ女だな」
「さ、朔。口悪くなってるよ」
「言われっぱなしは尺だろうが。むしろあれくらいで済ませたことを褒めてもらいたいくらいだ」
朔が肩を怒らせて歩きだす。これほどまでに感情露わにするのもめずらしい。
「ごめんね」
「柚が謝ることじゃない」
そう言いながらホテル前に停めていた車に乗り込む。運転をしながらも朔はまだ不機嫌そうだ。
ど、どうしよう。
私が知る中でもここまで尾を引くほど怒ったことなんてないかも。
機嫌が直る対策を思案していると、赤信号にひっかかり車がゆっくり停車した。
「指輪していけよ」
「指輪?」
「婚約指輪。結婚指輪は……まだ買ってないからさ」
「そういうのを言いがかりっていうんだよ」
それは英里子のナイフみたいな台詞を遮る形で飛んできた。振り返れば朔が立っていた。
「あと盗人猛々しいか?」
私の隣に並んだ彼が軽く首を傾ける。
「朔」
「アレクはうるさいから適当に置いてきた。帰ろう」
いつからいたのかと問う前に朔が言う。優しい眼差しから冷徹なものへと変わった彼は英里子をまっすぐ見据えた。
「柚瑠は別に男に媚びて寄生する女じゃない。ちゃんと他人のために踏ん張れる優しさと強さがある。まぁ自己中心的な思考の持ち主には到底理解できない代物だろうけどな」
朔の言葉に胸が締め付けられると同時に瞼が熱くなる。こんなところで泣いたら、せっかく庇ってくれているのにだめだ。込み上げてくる嗚咽を奥歯で噛み殺した。
「それに柚瑠にはもうクズ男なんて必要ないから、せいぜいあんたが面倒みてやればいい。彼女の悪口を平然と他の女に漏らす男にどれほどの価値があるか、考える前に答えは出ていると思うが」
痛い部分を刺されたのか、英里子の顔が苦々しく歪む。普段美しく、泰然と佇む彼女から言葉が出てこない。朔の流れるような口述が的確に彼女の弱い部分を貫いている。
このまま立ち去ってもよかった。でも、私から最後に彼女へ伝えたいことがある。
「英里子、私はあなたのことすごく羨ましかったし、尊敬していた。だから、こんな形で終わってしまうことになって残念だわ」
「偽善者」
「そうでもないよ。本当にあの時怒りと悲しみでポキっと折れちゃったから、私。あなたのこと今でも許せない。でも、またちゃんと立てるようになった。失った時間は戻せないけど、だからといって過去に構っていられるほど暇でもないの」
朔が立ち直るきっかけをくれたから。それを無駄にすることだけはできない。だから、怨念やら執着やらはここに置いていく。
英里子は黙って私を見つめていたけど、やがて駅のほうへ去っていった。私たちもホテル側へと歩き出す。
「ったく、クソ男にふさわしいほどのクソ女だな」
「さ、朔。口悪くなってるよ」
「言われっぱなしは尺だろうが。むしろあれくらいで済ませたことを褒めてもらいたいくらいだ」
朔が肩を怒らせて歩きだす。これほどまでに感情露わにするのもめずらしい。
「ごめんね」
「柚が謝ることじゃない」
そう言いながらホテル前に停めていた車に乗り込む。運転をしながらも朔はまだ不機嫌そうだ。
ど、どうしよう。
私が知る中でもここまで尾を引くほど怒ったことなんてないかも。
機嫌が直る対策を思案していると、赤信号にひっかかり車がゆっくり停車した。
「指輪していけよ」
「指輪?」
「婚約指輪。結婚指輪は……まだ買ってないからさ」