エリート弁護士は契約妻と愛を交わすまで諦めない
そういえば、婚約指輪はあのパーティーの日からしていない。結婚指輪も結婚式を挙げないし、急いで買う理由もなくて、有耶無耶になっていた。
「指輪が綺麗すぎて、傷ついちゃったら嫌で……今日は友達の結婚祝いの日だし」
「お前が引くことないだろ。んなもんな、見せつけるためのものなんだから普段からつけたらいいんだよ!傷ついたらまた買う!」
いや、婚約指輪は何個も買うものではないはず。
家にいる時間がほとんどだし、もし不注意でどこかにぶつけてしまったらと思うとおいそれとつけられなくて、大事にケースにおさめたまま部屋に飾っているのだ。
でも、プレゼントした側だとつけてほしいよね。
逆の立場で考えれば朔が言いたいこともわかる。今度出かける時はちゃんとつけよう。朔が喜んでくれるのが一番だし、私もあの指輪をするとドキドキして女の魅力が上がる気がする。
「でも、すっきりした」
青信号でまた車が動き出し、私は助手席にゆったり身を預けた。
「そうか?俺的には生温いけど」
「だって、朔がお構いなしにバンバン言って止まらないし、私当事者なのに全然そんな感覚なくなっちゃった」
「お前なぁ」
「朔が全部私のかわりに怒ってくれたから。ありがとね」
「俺は……別に。ああいう女は嫌いだから」
朔がむっと口を閉じた。照れているのがわかって笑みが零れた。
傷ついたけど、心が軽いのは彼がいてくれるから。朔と再会していなければ、今も私は実家で引きこもって出口のない暗闇に嵌ったままだっただろう。
そう考えると背筋がぞっとする。このひと月半の間に世界が明るくなった。
私は、朔に何かしてあげられただろうか。
ただ守られているだけではいけない。私も何かしてあげたい。朔のために。安寧な日常もそうだけど、はっきりと見える形で。
でも、今の私に何ができる?
昔の朔の趣味趣向は知っている。でも、今の朔のことはそこまで詳しくない。いつも家ではのんびりと読書をしたり、映画を観たりしている。特に推理物が好き。お酒はそこそこ飲めるけど、私が飲まないからあまり家で飲まない。別にそこまで飲酒に対しての欲もないらしい。
何をプレゼントしたら喜ぶのかな。
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