エリート弁護士は契約妻と愛を交わすまで諦めない

今日は夜は少し冷えるらしいからシチューにしよう。野菜を切って、ルーと一緒に最新の電気圧力釜に入れて時間をセットして終わりだし、失敗することもない。
あとはスーパーに惣菜類、いきつけのパン屋『egao』でフランスパンを買った。
その間、朔が好きだった相手が私という新事実が駆け巡って気がそぞろになり、普段の買い物の倍時間がかかった。
ただマンションに戻ったところで、朔から『今日は帰りが遅くなるから先に休んでて』とメッセージが入った。がっくりと肩を落とす。
でも、今まで夜遅くならないよう朝に仕事を回していたと聞いたところだ。『うん、大丈夫だから。気にしないで』とだけ返した。
今日は訊くの無理そう。
仕事で疲れて帰ってきた朔に恋愛のあれこれを聞き出すのも違う気がする。しかも、里見さんから聞いたと言っていいものか……。朔、里見さんに怒りそうだし。
「ただいまー」
シチューの材料を電気鍋にセットしてぼけっとしていると、京子さんの声が玄関から聞こえてくる。時計は七時を過ぎたところだった。
「おかえりなさい」
「はぁ、肩凝った。あ、ごはんできてる!ありがとー!」
リビングに入ってキッチンを見ながら鞄を下ろす京子さん。スーツ姿がかっこよくて、里見さん同様飾り気がなくても美しいなと思う。


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