客観的恋愛曖昧論〜旅先の出会いは、運命の出会いでした〜
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四萬部寺の駐車場にクルマを停めると、二人は各々の荷物を持ってクルマを降りた。
二葉は匠のそばに駆け寄ると、輪袈裟を彼の首に掛ける。匠も思い出したように二葉の首に掛けた。
「六年振りだね……しかもこのお寺から始まったし」
「そうだね……ちょっと感慨深いかも」
二人は本堂への道を進む。線香と蝋燭に火をつけ、写経を納めると、いつものように般若心経を唱え、納め札を箱に入れた。
納経帳は二人とも三度の重ね印が押されており、今回は四巡目になる。
「匠さんは私と巡った後は来てないの?」
二葉が聞くと、匠は気まずそうに笑った。
「うん、でも代わりに西国三十三観音様とか行っちゃった」
「えっ、いいなぁ。西日本はまだ一ヶ所も行けていないよ……」
「いつか一緒に行こうよ。でもその前に坂東三十三観音様を行かないとね」
「うん、楽しみにしてる」
二人は車に戻る前に巡礼用品の店舗に立ち寄る。ここで二葉が匠に声をかけて、二人の旅が始まったのだ。
縁って本当に不思議。まさかあの出会いがこうして繋がるなんて思いもしなかった。
「あっ、私お御影入れが欲しかったんだ」
「あぁ、仏さまの姿絵を入れるやつ?」
「うん、きちんと保管したいなぁと思って」
二葉が赤いお御影入れを選ぶと、匠は青を手にする。
「俺も買おうかな」
「うふふ。お揃いだ」
「だね」
店舗を後にしてから車に戻る前に、思い立ったように二葉は八体佛に近寄り、そっと目を閉じ手を合わせた。
「匠さんと出会わせてくれて、ありがとうございました……」
すると匠も隣に立って手を合わせる。
「これからも二葉との縁が続きますように……」
二人の気持ちが同じ方向を向いていることが嬉しかった。顔を見合わせ笑い合うと、次の寺へ向かった。