「私の為に、死んでくれませんか?」 ~君が私にキスしない理由~
先輩に部屋に運ばれた後、私はそのまま高熱を出し、寝込んでしまった。全身打撲傷と、重いストレスによる風邪。家を訪ねた会社の専属産業医はそう言って、私は病気休暇を貰った。死んでいても、ここまで調子を崩すことができるものだと、又新たな知識が増えた。
倒れている間、野島先輩が何回か部屋を訪ねて、食料なり生活用品なりを揃えてくれた。きっと自分がやらかしたこともあり、責任を感じたからだろう。後輩を放置したことは許しがたいけど…おかげさまで、3日が経った今では、座って窓越しの風景を眺めるくらいには回復していた。そろそろお腹が空いたなーと思った時、タイミング良く玄関から先輩の声が聞こえた。
「おい、綾月。起きてるか?入るぞー」
「はい、起きてます…あれ?」
慣れた様子でつかつかと入り込む先輩の後ろに、別の人が見えた。あれ、この人は…私は首をひねりながらその人を呼んだ。
「藤田さん…?なぜここに…?」
「突然すみません、綾月さん。野島が今日も行くと言ってたので、ついてきました」
「俺は来るなって言ったのに…」
「お前に用があったわけじゃないから。ー綾月さん。一旦中へ入っても良いですか?」
思わぬ人の思わぬ訪問。私は二人を部屋の真ん中に案内した。狭い空間に体格の良い男が二人入ると、この部屋がいっぱい埋まったような気分になる。お茶でも出そうと思いキッチンに足を運ぶ私を、野島先輩が引き止めた。
「おい、病み上がりの人はお茶とか気にするな。まだ調子悪いだろ?」
「いや、でも…」
「そうですよ。私はこれを渡しに来ただけですので。こちらどうぞ」
そう言って、藤田さんが持ってきた紙袋をテーブルの上においた。中身を確認すると、そこにはいろんな味のフルーツゼリーが入っていた。とても美味しそうで、熱で家出していた食欲が戻ってくるのを感じる。嬉しい気持ちが顔に表れてモロバレだったのか、藤田さんがニコッと微笑んだ。
「それ、私が買って来たことにしてくださいね。私は誰にも頼まれず、自分の意思で、これを買って来たのです。決して誰かの命令で来たわけではありません」
「え?どういう意味ですか?」
「だーかーらー、自分が贈ったとは言わず、こっそりお前の様子を見てこい、と命じたってことだろ?ーたく、そんな気になるなら自分で直接来れば良いものを。やっぱ胡散臭いやつ」
「はは、最後の言葉とても気になりますが聞かなかったことにしましょう。ちなみに、何を差し入れれば良いのかも結構深刻に悩んでいたので、これは私がアドバイスしました。どうですか?結構美味しいと評判の店ですよ」
野島先輩の嫌味の言葉は軽くスルーして、藤田さんは「自分のセンスを褒めてくれ!」という口調でゼリーの話をした。確かに、嬉しい差し入れではあるが…私はそれより、これを贈った人のことが気になった。
「あの、その…あの人は、どうしてますか?」
「どうもしていませんよ。いつもと特に変わっていません。あ、綾月さんの様子が気になっているのは確かです。今日は帰って、ちゃんと回復中だと伝えます」
「え?ああ…はい。明日くらいには出社できると思いますので…」
「いいえ、もう一週間フルで休んでください。じっくり体を休ませて、完全に回復してからで結構です。では、私はこれくらいで失礼します」
藤田さんは本当に用件だけさっさと済まして、立ち上がった。玄関に出ようとする私を引き止め、藤田さんはそのまま部屋を出て行く。まだ残っていた野島先輩は深刻な顔で、誰か聞いているわけでもないのに声を下げ質問した。
「お前、本当にあいつとどんな関係なんだ?もう、これはただの社長と社員の関係ではないだろ?」
「ええ…まあ…なんと言えば良いのでしょう」
「もしかして、無理やりストーキングされてるとか?そんなことあったらちゃんと言えよ」
「ははっ…心配ありがとうございます。でも本当に大丈夫です」
「会って初めての日に寝ました」とは流石に言えず、私は返事を誤魔化した。先輩は私の答えにまだ納得がいかないようだったが、それ以上問い詰めたりはせず、自分のタブレットを出した。そして何かをポチポチ押して、私に画面を見せた。
「お前、俺たちが営業に行ったあの少年の記事、見たか?」
倒れている間、野島先輩が何回か部屋を訪ねて、食料なり生活用品なりを揃えてくれた。きっと自分がやらかしたこともあり、責任を感じたからだろう。後輩を放置したことは許しがたいけど…おかげさまで、3日が経った今では、座って窓越しの風景を眺めるくらいには回復していた。そろそろお腹が空いたなーと思った時、タイミング良く玄関から先輩の声が聞こえた。
「おい、綾月。起きてるか?入るぞー」
「はい、起きてます…あれ?」
慣れた様子でつかつかと入り込む先輩の後ろに、別の人が見えた。あれ、この人は…私は首をひねりながらその人を呼んだ。
「藤田さん…?なぜここに…?」
「突然すみません、綾月さん。野島が今日も行くと言ってたので、ついてきました」
「俺は来るなって言ったのに…」
「お前に用があったわけじゃないから。ー綾月さん。一旦中へ入っても良いですか?」
思わぬ人の思わぬ訪問。私は二人を部屋の真ん中に案内した。狭い空間に体格の良い男が二人入ると、この部屋がいっぱい埋まったような気分になる。お茶でも出そうと思いキッチンに足を運ぶ私を、野島先輩が引き止めた。
「おい、病み上がりの人はお茶とか気にするな。まだ調子悪いだろ?」
「いや、でも…」
「そうですよ。私はこれを渡しに来ただけですので。こちらどうぞ」
そう言って、藤田さんが持ってきた紙袋をテーブルの上においた。中身を確認すると、そこにはいろんな味のフルーツゼリーが入っていた。とても美味しそうで、熱で家出していた食欲が戻ってくるのを感じる。嬉しい気持ちが顔に表れてモロバレだったのか、藤田さんがニコッと微笑んだ。
「それ、私が買って来たことにしてくださいね。私は誰にも頼まれず、自分の意思で、これを買って来たのです。決して誰かの命令で来たわけではありません」
「え?どういう意味ですか?」
「だーかーらー、自分が贈ったとは言わず、こっそりお前の様子を見てこい、と命じたってことだろ?ーたく、そんな気になるなら自分で直接来れば良いものを。やっぱ胡散臭いやつ」
「はは、最後の言葉とても気になりますが聞かなかったことにしましょう。ちなみに、何を差し入れれば良いのかも結構深刻に悩んでいたので、これは私がアドバイスしました。どうですか?結構美味しいと評判の店ですよ」
野島先輩の嫌味の言葉は軽くスルーして、藤田さんは「自分のセンスを褒めてくれ!」という口調でゼリーの話をした。確かに、嬉しい差し入れではあるが…私はそれより、これを贈った人のことが気になった。
「あの、その…あの人は、どうしてますか?」
「どうもしていませんよ。いつもと特に変わっていません。あ、綾月さんの様子が気になっているのは確かです。今日は帰って、ちゃんと回復中だと伝えます」
「え?ああ…はい。明日くらいには出社できると思いますので…」
「いいえ、もう一週間フルで休んでください。じっくり体を休ませて、完全に回復してからで結構です。では、私はこれくらいで失礼します」
藤田さんは本当に用件だけさっさと済まして、立ち上がった。玄関に出ようとする私を引き止め、藤田さんはそのまま部屋を出て行く。まだ残っていた野島先輩は深刻な顔で、誰か聞いているわけでもないのに声を下げ質問した。
「お前、本当にあいつとどんな関係なんだ?もう、これはただの社長と社員の関係ではないだろ?」
「ええ…まあ…なんと言えば良いのでしょう」
「もしかして、無理やりストーキングされてるとか?そんなことあったらちゃんと言えよ」
「ははっ…心配ありがとうございます。でも本当に大丈夫です」
「会って初めての日に寝ました」とは流石に言えず、私は返事を誤魔化した。先輩は私の答えにまだ納得がいかないようだったが、それ以上問い詰めたりはせず、自分のタブレットを出した。そして何かをポチポチ押して、私に画面を見せた。
「お前、俺たちが営業に行ったあの少年の記事、見たか?」