「私の為に、死んでくれませんか?」 ~君が私にキスしない理由~
そして、病休が終わった。
部屋を出るその瞬間にも、私は答えを出すことができなかった。しかしもうこのままだと,たとえ1年休んだとしても結論は出ないだろう。そう思い、私は会社の方へ向かった。しばらく顔を見てなかったオフィスの人たちが笑顔で迎えてくれた。
「あら、綾月さん。もう大丈夫ですか?」
「あ、はい、おかげさまで。ご迷惑をおかけしました」
隣席の人の挨拶に応じて、私は自分の席でパソコンに電源を入れた。結構長い時間休んでいたので、色々とメールも溜まっているはず。慣れた様子で受信箱をクリックすると、その中で目立つタイトルのメールがあった。それを見た瞬間、なんだか体がビクッとした。
<高尾山事件に関する記事_まとめ>
送り主は「藤田」となっている。ゼリーの次はこれか…と思いつつ、私はそのメールを開けた。中には各新聞社のネット記事のリンクが貼られてあり、私は深呼吸をしながら各リンクを一つ一つクリックした。
どの記事の内容も似たりよったりで、あの男たちが容疑者として一回逮捕されたが、証拠不十分で結局釈放された話を読んだ時は、歯をぎゅっと食いしばった。未だにあの邪悪な笑みが忘れられないのに、私はこの目で確かに見たのに…。
悔しい気持ちを抱いたまま最後のリンクをクリックしたとき、今回はあるポータルサイトのニュースが動画で流れた。早速泣き声の響く画面に私はすべての神経を集中させた。
「とてもいい子だったんです。本当にいい子だったのに、どうして…」
少年が住んでた街の住民らしき人のインタビューが何個か流れる。皆少年がとても優しくて、誠実で、誰かの恨みを買うような行動もしてない、そう言った。
私は再び、あの赤く染まったスニーカーを思い出した。いや、でももう意味のないことだ。苦しい思いで目をぎゅっと閉じる私の耳に、続いてまた別の人の声が流れた。
「あの子が、手紙を残していたんです」
(…?)
目を開けて画面を見ると、そこにはモザイクされた中年女性の姿があった。メソメソする声ではっきり聞こえないけど、字幕のおかげでなんとか内容が分かった。画面の女性は、殺害された少年の母だった。母親の話が終わると、続いてリポーターの解説が流れた。
「ー殺害された少年ですが、着ていた服の中に手紙を残していて、その手紙は無事お母さんへ届きました。いつこれを書いたのかは明確にされておりませんが、少年はまるで自分が殺されることを想定したかのように、一人残される母親のことを心配していました。しかし、この手紙には犯人のことは書かれておらずー」
一瞬だったが、その「手紙」をカメラが見せてくれた。モザイクされていてはっきりは見えないが、やはり血に染まっていて、少年がいつそれを書いたのかは想像がつかなかった。そしてふと、あの夜、私は社長の背中で自分が言っていた言葉を思い出した。
「…あの子が自分の母のことを大事に思っていたことが、きちんと届かずに終わったことが悲しいです」
あのとき、あの人はどんな顔をしていたのだろうか。自分の感情が溢れすぎて、どうしても止まってくれない涙が悔しくて、なにも考えずにいた。しかし、今改めて考えてみると…。
私はそのまま席から立ち上がり、早速オフィスのエレベーターの方へ向かった。向かう先は、もう決まっていた。
部屋を出るその瞬間にも、私は答えを出すことができなかった。しかしもうこのままだと,たとえ1年休んだとしても結論は出ないだろう。そう思い、私は会社の方へ向かった。しばらく顔を見てなかったオフィスの人たちが笑顔で迎えてくれた。
「あら、綾月さん。もう大丈夫ですか?」
「あ、はい、おかげさまで。ご迷惑をおかけしました」
隣席の人の挨拶に応じて、私は自分の席でパソコンに電源を入れた。結構長い時間休んでいたので、色々とメールも溜まっているはず。慣れた様子で受信箱をクリックすると、その中で目立つタイトルのメールがあった。それを見た瞬間、なんだか体がビクッとした。
<高尾山事件に関する記事_まとめ>
送り主は「藤田」となっている。ゼリーの次はこれか…と思いつつ、私はそのメールを開けた。中には各新聞社のネット記事のリンクが貼られてあり、私は深呼吸をしながら各リンクを一つ一つクリックした。
どの記事の内容も似たりよったりで、あの男たちが容疑者として一回逮捕されたが、証拠不十分で結局釈放された話を読んだ時は、歯をぎゅっと食いしばった。未だにあの邪悪な笑みが忘れられないのに、私はこの目で確かに見たのに…。
悔しい気持ちを抱いたまま最後のリンクをクリックしたとき、今回はあるポータルサイトのニュースが動画で流れた。早速泣き声の響く画面に私はすべての神経を集中させた。
「とてもいい子だったんです。本当にいい子だったのに、どうして…」
少年が住んでた街の住民らしき人のインタビューが何個か流れる。皆少年がとても優しくて、誠実で、誰かの恨みを買うような行動もしてない、そう言った。
私は再び、あの赤く染まったスニーカーを思い出した。いや、でももう意味のないことだ。苦しい思いで目をぎゅっと閉じる私の耳に、続いてまた別の人の声が流れた。
「あの子が、手紙を残していたんです」
(…?)
目を開けて画面を見ると、そこにはモザイクされた中年女性の姿があった。メソメソする声ではっきり聞こえないけど、字幕のおかげでなんとか内容が分かった。画面の女性は、殺害された少年の母だった。母親の話が終わると、続いてリポーターの解説が流れた。
「ー殺害された少年ですが、着ていた服の中に手紙を残していて、その手紙は無事お母さんへ届きました。いつこれを書いたのかは明確にされておりませんが、少年はまるで自分が殺されることを想定したかのように、一人残される母親のことを心配していました。しかし、この手紙には犯人のことは書かれておらずー」
一瞬だったが、その「手紙」をカメラが見せてくれた。モザイクされていてはっきりは見えないが、やはり血に染まっていて、少年がいつそれを書いたのかは想像がつかなかった。そしてふと、あの夜、私は社長の背中で自分が言っていた言葉を思い出した。
「…あの子が自分の母のことを大事に思っていたことが、きちんと届かずに終わったことが悲しいです」
あのとき、あの人はどんな顔をしていたのだろうか。自分の感情が溢れすぎて、どうしても止まってくれない涙が悔しくて、なにも考えずにいた。しかし、今改めて考えてみると…。
私はそのまま席から立ち上がり、早速オフィスのエレベーターの方へ向かった。向かう先は、もう決まっていた。