俺様石油王に懐かれて秘密の出産したら執着されてまるごと溺愛されちゃいました
 勤務先の病院は寮から、目と鼻の先。
出勤に着る服なんて、Tシャツに、デニムを合わせたパンツスタイルに、寒い日は、これにジャケットを羽織るのが定番だ。


 もう一つの紙袋には丁寧に箱に詰められていた。
開けると、ワンピースにコーディネートされた、ローヒールの白いパンプスが入っていた。

「皮が柔らかくて、これなら長時間履いても、足が痛くならなそうね」

 小さい包には青いサファイアの石と、その周りを囲む様に白い石が花びらになっているピアスと、揃いのネックレスが入っていた。

「綺麗…… アミールの瞳と同じ色…… 」

 シャララッと揺らしてみる、
光に反射して幻想的に青いサファイアが変化する。

「…… 私、一晩で灰かむりから、シンデレラに変身じゃない?!」


 オシャレでセンスが良く、何から何まで、至れり尽くせりだ。イケメンはやる事まで、イケメンだ。

フーッと小さく息を吐く。

「……これ、全部、私でも知ってる高級ブランドだよね…… 」

 ウーン…… 。
高級感溢れる柔らかい生地の手触りを感じながら、悩むこと30分……

(明日、着て行くように、用意してくれたんだろうけど、こんなハイブランド、間違って汚しても弁償出来ないんですけど……。
それに、もし、ピアス落としたら?!
 恐ろしくて、めっちゃ、落ち着かないよ…… )

 「はああーぁぁっ」

(看護してた時は、余り気にならなかったけど、あー…… 、いや、確かに、パジャマはシルクだった、けども…… 。
贈り物や、身に付ける服一つとってもやっぱり、貧乏孤児の看護師と、かたや全世界を相手に戦う石油王…… 。
本当、住む世界が違うんだな…… )


 自分の恋心に、気が付いたばかりだって言うのに、身分違いもいい所だ。

 いくら、着飾ったって、あんな素敵な婚約者に勝てるわけない。
ましてや、ハイスペックなアミールに、してあげる事なんて私には、何もない。
 

 それに…… ずっと心に引っかかっている、現地スタッフの、あの言葉。


「一夫多妻ってなんなの?! 
私だけ見てくれない相手なんて無理、無理! 誰かと共有するなんて、心がもたないわ。
そんなの私が欲しい愛じゃない!!」

(告る前に、失恋決定かぁ…… )

「…… 私はただ一人だけで良いのに…… 」

 複雑な思いでいっぱいになり、ボスッと力なく、ベットに膝から崩れ落ちた。
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