俺様石油王に懐かれて秘密の出産したら執着されてまるごと溺愛されちゃいました
 スーッ、ハーッ、スーッ、ハーッ……
アミールとの待ち合わせの部屋の前で何度も深呼吸をする。
緊張で手先が白く冷たくなってきた。

(患者として会うと時はこんなに緊張した事なかったのに…… )
 
逢いたいのに、逢いたくない。
不思議な感情が湧いて来て、今すぐに逃げ出したくなる。

 もう一度、息をフーッと吐き出すと、ドアノブに手を掛けた。


瞬間、ガチャッと、中からドアが開いた。

「わ、わっ!!」

 会いたかった人が突然現れ、驚いて目を見開き、口を開けたまま、アミールを見つめた。
かなりのアホズラをしていたと思う。

 体調が良くなったからなのか、病室にいた時よりも端麗さを増して、雅やかな身のこなしで、ますます私とは、住む世界が違うのだと実感する。

「さっきから人の気配がするのに、全然入って来ないからな、迎えに来た」

 手を差し出され、おいで、と、徐に手を取られ、頬にちうっと、キスを落とされた。

(ひゃーあああぁっ、な、何?! 王子か、これ?! )

 心の中は、嵐の様に慌ただしく、感情が吹き荒れる。

(エスコートとか初めてされたんだけど…… しかも、自然にキスとか…… こっちでは当たり前の挨拶なんだろうけど、やっぱり恥ずかしいっ)

 目を三日月型に変え、涙袋が盛り上がると、少しだけあどけなく見える、アミールが新鮮で、ドキドキッと大きな音で心臓が脈打つ。

(私のドキドキッ、絶対聞こえてるよね)

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