俺様石油王に懐かれて秘密の出産したら執着されてまるごと溺愛されちゃいました
 慈愛を含んだ眼差しに見つめられると、ドキンッと心臓が跳ね上がる。

「一花、こんなに心惹かれる女に出会ったのは、お前が初めてだ。 俺の初めてもお前にやる。 だから、これからのお前の初めては、全て俺にくれ」

 そう言ってアミールは、私の左手を取ると、薬指の付け根をカプリッと、噛んだ。

「…… んっ!」

 チリッとした痛みが広がり、薄らと歯形が付く。
 
 まるで指輪のように、まあるく、跡が付いている。

 アミールはペロリと舌を出して、私の指に滲んだ血を、舐めとった。

「一花、俺の女になれ」


 クラクラする程の甘い誘惑。

 独占欲を存分に現した、薬指の歯型に嬉しくなる。

 このまま流されてしまえたら、どんなに良いか……

 背徳感を抱えながら、好きだと伝えたい。

 私は冷静になる為に、フッーッと小さく息を吐いた。


「…… 無理よ…… 」

「何故だ?」

 青い瞳が一瞬揺らいで、影を落とす。

 ギュッっと、心を鷲掴みにされた様に痛んだが、気づかないフリをして私は口を開いた。


「…… 私は…… 、私だけを愛してくれる唯一が良いの。 あなたにはアイシャさんがいるわ。 私は他の人と、仲良くしているあなたを、側で見ている事なんて出来ない」

「アイシャの事は気にしなくていい」

 眉を顰め、不機嫌そうにそう言い放つアミールに、悲しくなる。
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