黒子ちゃんは今日も八重樫君に溺愛されて困ってます〜御曹司バージョン〜
それから1週間八重樫君の営業の事務サポートをしていたが、彼は飲み込みが良い上に頭の回転が早い。

どこかで八重樫君に手を焼くことを望んでいたのか、少し寂しく思っていると代わりにと言わんばかりに駒田君が問題を起こしてくれた。

「二条さん、アップコスメからお電話です」

いつものように電話に出ると担当者は早口でまくし立ててきた。

私はいつもと違う様子に驚きながらも話しを聞いていると、今日納品してもらうはずの商品が午後になっても届いていないという事で焦っているらしい。

でも今日の納品は無いはずだ。
システムで確認しても予定は1週間後になっている。
希望納期通りだし、これで納期回答もしていたので、何か勘違いしているのだろうかと思いながら私は状況を詳しく聞いた。

「この間、二条さんがお休みだったから駒田さんにお願いしたんだよ。納期を早めて欲しいって」

何故そんな大事な事を駒田君にお願いするんですか……

「そしたら大丈夫だって、お願いして確認メールだって送ってもらったんだから」

何を見て駒田君は大丈夫と答えたのだろうか。

「あれ、二条さんのメアド入ってないな。気づかなかったなぁ」

そうでしょうね、私にもメールが入っていれば気づきますよ。
それにしても、そんな大事なメールになんで入れ忘れるのさ駒田君。

「とにかく製造スケジュールは変えられないんだよ。明日の朝までに何とかしてよ」

「申し訳ございませんでした。確認して再度ご連絡致します」

私は電話を切り、頭を抱えた。

「大丈夫ですか?」と八重樫君が心配して声をかけてくれた。

そうだった。八重樫君から質問されている最中だった。

「大丈夫です。八重樫君、すみませんが、これは別の日に説明してもよろしいでしょうか。急遽対応しなければならない仕事がありまして」

「分かりました。大丈夫ですよ」

優しい笑顔で八重樫君は自分の席に戻った。

私は、会社のパソコンでプライベートのSNSチェックしている駒田君に声をかけ、事情を聞き出すと、忘れてましたとあっけらかんと答えられた。

忘れてたじゃないよ。忘れるならその場で誰かに依頼するなり、私にメール入れるなりしてくれよ。

だが彼はまたやるだろう。
私が休み明けに何かなかったかちゃんと彼に聞く事を徹底していなかったのが悪かったのだと反省し、今やるべき事は調整しかないと気持ちを切り替え、駒田君と一緒に課長へ報告し、対応について相談した。

アップコスメとは大きな取引はないものの、創業時代からの取引でコンスタントに注文をしてくれている大事な取引先だ。

うちが困った時は無理にでも発注をかけてくれる事もある大切なお客様なので、うちのミスで迷惑をかけるわけにはいかない。

課長の指示でメーカーに問い合わせたものの、納期は変更できても3日程度しか早くならないとのことだった。

課長から該当製品の納品予定リストを作るよう依頼され、そのリストを元に課長と駒田君と私の3人で該当先に電話をかけ、私達は何とか納期の調整を行なうことができた。

アップコスメには明日朝9時指定で納品する事を約束し、何とか事なきを得た。
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