黒子ちゃんは今日も八重樫君に溺愛されて困ってます〜御曹司バージョン〜
八重樫君はにっこり笑い私に近いできた。

なんだろうと思っていると、私の手をとって私を立ち上がらせた。

な、な、何? 今度は何?

私に考える余地もなく彼は俊敏な動きで私の背後に周り私を抱きしめてきた。

バックハグ!

宙に天使が舞っている。

私はこのまま天に召されるのでしょうか。

するとそのまま八重樫君は私が座っていた椅子に座り、私は八重樫君の膝の上に乗せられた。

「どう? ドキドキする?」

「か、からかってるんですか? 全然しません」

嘘です。ドキドキしまくっています。

「本当はしてるんでしょ」

そう言うと八重樫君は私の手をサワサワと触りながら恋人繋ぎをしてきた。

指からまってますけど!

ダメダメ。動揺したらダメ。こんな年下に動揺していたなんてバレた時には明日社内中の笑いものにされる。

もがけばもがくほど八重樫君との密着度が上がってしまう。

これ以上はもう無理と目をぎゅっと閉じると「あはは……二条さん、さすがにここではやらないよ」と横から私の顔を覗いた八重樫君に笑われた。

やられた。完全に馬鹿にされている。

八重樫君は「明日、いつもの時間にいつもの映画館で」と私の耳元で言い、立ち上がると私を解放してそのまま帰っていった。

もちろん八重樫君の言う事なんて……

聞かないつもりがいつもの時間にいつもの格好で映画館にやって来てしまった。

いやいや、これは八重樫君に言われたからではなく、習慣というものだ。

毎週この時間にここに来る。それは私のルーティンではないか。

辺りを見渡すと、今日もモデル並みにおしゃれでカッコいい八重樫君が気怠そうに入口付近の壁に寄りかかっていた。

怠ければ来なければいいのに。

彼の前を通る女性たちは芸能人でも見たかのように騒いでいる。

分からなくはない。それくらい輝いている。

が、しかし、私は騒がない。むしろ見つかってはならない。下を向いて騒いでいる女性たちに紛れて彼の前を通る。

「何、素通りしてんの?」

悪魔に捕まった。

「あら、いらしてたんですか? 気が付きませんでした」ととぼけてみるも、「何お嬢様ぶってんの?」とイタイ子認定された。

屈辱だ。

「チケット買ってあるからとりあえず、あそこでコーヒー飲もう」

八重樫君に手を握られ連行されるようにイートインスペースに移動した。

「それで今日は何を観るのですか?」

「それはあとのお楽しみ」

な、なんですか? 楽しそうな微笑みを浮かべて、これじゃあまるで彼女とのデートを楽しんでいる彼氏みたいじゃないですか。

「眠そうですが、大丈夫ですか?」

カップルっぽくない話題を探したが、なんだか彼氏を心配する彼女っぽい発言になってしまった。
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