黒子ちゃんは今日も八重樫君に溺愛されて困ってます〜御曹司バージョン〜
「でも黒子ちゃん、可哀想だね。あんなにチヤホヤされちゃうと八重樫君のこと好きになっちゃうよね」
「本当、八重樫君も罪な奴だよね。期待持たせちゃってさ。黒子ちゃん傷つかないと良いけど」
そして、なんてみんな優しいんだろ。私のこと心配してくれている。
でも、これって私がみんなを騙しているってことなのかな。
それでもこれから先ずっと八重樫君が私を好きでいてくれる保証はない。
仕事を恋愛のいざこざで辞めるわけにはいかない。私はもう簡単に転職ができる歳じゃない。
それから、私は八重樫君の攻撃を何とか交わしつつ日々を過ごしていた。
「部長お疲れ様でした」
今日は定年退職を迎えた部長の送迎会だ。
それにしても、部長の送迎会だと言うのに私の席の周りの女子は次の部長の話題で持ちきりだ。
「バツイチ子持ちらしいんだけど、50にしては色気が凄いんだって」
「仕事もできて、色気のある上司か。いいね」
「課長可哀想だよね。次は自分だって思ってたみたいだし」
「いや、課長は頼りなさ過ぎでしょ」
聞こえないとはいえ、言いたい放題だ。
私はこの日早く帰りたくて仕方がなかった。
理由は、大好きな漫画が更新される日だったからだ。ちょうどいい所で寸止めされている。
早く続きが読みたくて仕方がない。
八重樫君がいると中々漫画を読ませてくれないから、今日は八重樫君には二次会に行ってもらってその間に……と考えながらトイレから出ると待ってましたと言わんばかりに八重樫君がニヤニヤと扉の前で待ち構えていた。
「今日はソワソワしてるね。どうしたの? あの日のこと思い出した?」
「あの日って?」
「俺の歓迎会。何でピンとこないの?」
そういえば、今日の会場は八重樫君の歓迎会と同じレストランだ。
そうか、あの時、失態を犯さなければ……
犯さなければこのムスッとした彼は私の前にいなかったということか。
「思い出してないわよ」
「じゃあ、何でそんなにソワソワしてるの?」
「別にソワソワなんてしてないよ」
「スマホばっかり見てた」
「何時だろうって見てただけ。早く戻んないと怪しまれるからそこどいて」
「他の男のこと考えたりしてないよね」
おっとバレている。
と言ってももちろん漫画の世界の男。
あれから年下男子の話はどうも現実とリンクしてしまい、その結果、なんと枯れ専と化した私は現在、執事のおじさまにお熱です。
「何言ってんの。早く。あと、今日は二次会に行くんでしょ? 私は先に帰るから」
私が八重樫君を押しのけようとすると、壁ドンからの顎クイ。
顔を近づけて、じっくりと目を合わせてくる。
美しいその目で、疑い深く私を見ないでください。
私は、後ろめたさに目を逸らしてしまった。
「本当、八重樫君も罪な奴だよね。期待持たせちゃってさ。黒子ちゃん傷つかないと良いけど」
そして、なんてみんな優しいんだろ。私のこと心配してくれている。
でも、これって私がみんなを騙しているってことなのかな。
それでもこれから先ずっと八重樫君が私を好きでいてくれる保証はない。
仕事を恋愛のいざこざで辞めるわけにはいかない。私はもう簡単に転職ができる歳じゃない。
それから、私は八重樫君の攻撃を何とか交わしつつ日々を過ごしていた。
「部長お疲れ様でした」
今日は定年退職を迎えた部長の送迎会だ。
それにしても、部長の送迎会だと言うのに私の席の周りの女子は次の部長の話題で持ちきりだ。
「バツイチ子持ちらしいんだけど、50にしては色気が凄いんだって」
「仕事もできて、色気のある上司か。いいね」
「課長可哀想だよね。次は自分だって思ってたみたいだし」
「いや、課長は頼りなさ過ぎでしょ」
聞こえないとはいえ、言いたい放題だ。
私はこの日早く帰りたくて仕方がなかった。
理由は、大好きな漫画が更新される日だったからだ。ちょうどいい所で寸止めされている。
早く続きが読みたくて仕方がない。
八重樫君がいると中々漫画を読ませてくれないから、今日は八重樫君には二次会に行ってもらってその間に……と考えながらトイレから出ると待ってましたと言わんばかりに八重樫君がニヤニヤと扉の前で待ち構えていた。
「今日はソワソワしてるね。どうしたの? あの日のこと思い出した?」
「あの日って?」
「俺の歓迎会。何でピンとこないの?」
そういえば、今日の会場は八重樫君の歓迎会と同じレストランだ。
そうか、あの時、失態を犯さなければ……
犯さなければこのムスッとした彼は私の前にいなかったということか。
「思い出してないわよ」
「じゃあ、何でそんなにソワソワしてるの?」
「別にソワソワなんてしてないよ」
「スマホばっかり見てた」
「何時だろうって見てただけ。早く戻んないと怪しまれるからそこどいて」
「他の男のこと考えたりしてないよね」
おっとバレている。
と言ってももちろん漫画の世界の男。
あれから年下男子の話はどうも現実とリンクしてしまい、その結果、なんと枯れ専と化した私は現在、執事のおじさまにお熱です。
「何言ってんの。早く。あと、今日は二次会に行くんでしょ? 私は先に帰るから」
私が八重樫君を押しのけようとすると、壁ドンからの顎クイ。
顔を近づけて、じっくりと目を合わせてくる。
美しいその目で、疑い深く私を見ないでください。
私は、後ろめたさに目を逸らしてしまった。