Gentle rain
「はい。」

そう言って彼女の背中を見送って、お会計の場所で、カードを出した。

お金を払っている時でさえ、気持ちがふわっとしていて、さっきの彼女の困った顔を思い出しては、お店の人に知られないように、密かにニヤけてしまった。

金額なんて、どうでもいい。

彼女と一緒に食事ができた事が、ただただ楽しかった。

その為の代価など、いくらでも払いたい気分にさせてくれたんだ。

ああ、こんな気持ちがあるんだ。

30も半ばになって、初めてその事を知った。


お会計を済ませて、お店の外へ出ると、彼女は二階の奥の窓を見上げていた。

「美雨ちゃん。」

俺の呼びかけにも気づかないくらいに、彼女は何かに夢中だった。

「美雨ちゃん?」

側に行って、彼女が見ている物を、一緒に眺めた。


「花火?」
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