Gentle rain
一歩前に出た彼の瞳は、沢山の物が映っていて、奥が見えなかった。

「君は菜摘さんの、何を知っているって言うんだ。」

「あの女の交際していた男、誰か知っていますか?」

「いや。」

彼は俺を見ながら、携帯を操作すると、一枚の写真を俺に見せた。

そこには菜摘さんと、一人の男性が写っていた。


「自分の兄です。」

「えっ?」

菜摘さんの元彼が、三科君の兄貴?


「兄は、あの女に本気でね。釣り合う男にようやくなったと喜んでいた時、仕事の失敗で左遷されたんです。」

「左遷?」

「兄が東京を離れるから、ついてきてくれと言った時、あの女は何て言ったと思います?」

「さあ…何て言ったんだ?」

「ついていけるわけないでしょう?落ちぶれた男に。」


菜摘さんが、そんな事を?

あの菜摘さんが?
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