Gentle rain
「何時に終わるの?そんなに遅くまで働かないだろう?」

「それが……9時までのシフトで……」


9時?

飲食店でもない、普通の雑貨屋が9時まで仕事?

“ウソだろう”と思いながらも、彼女の本当に困った顔を見ると、それ以上言えない。


「待ってるから。」

彼女の瞳に、涙が浮かぶ。

「俺、待ってるから。君がまたここに来てくれるまで、ずっと待ってるから。」

俺を見つめる彼女の瞳に、吸い込まれそうだ。

「お願いだから……来るって…言ってくれ。」


俺は、可笑しいんじゃないだろうか。

一回り以上も年下の、二十歳の女の子に、こんな事を言うなんて。


その証拠に、俺は今にも彼女の唇を、奪ってしまいたい衝動に駆られている。

だが彼女は、俺の気持ちを知ってか知らずか、首を少しだけ下に下げると、そのまま背中を向けて行ってしまった。
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