Gentle rain
「その証拠に?」

菜摘さんは、俺の胸に埋めていた顔を上げた。

「階堂さんが、その人かどうか、確かめたくて仕方がないわ。」

「どうやって確かめるの?」

「……イジワルね。知っているくせに。」


菜摘さんの潤んだ瞳に、俺が映っていた。

どちらともなく、顔を近づけて、ゆっくりと二人の唇を重ね合わせた。

清楚な菜摘さんの、情熱的なくちづけ。

数年前の、そう今日会話を交わした、三科君くらいの年齢の俺だったら、間違いなく菜摘さんに気持ちまで、奪われていただろう。


「…あまり、乗り気じゃなかった?」

俺の唇を片手でなぞりながら、菜摘さんは甘い吐息を、俺にくれた。

「いや。あまりにも情熱的なキスだったから、ゆっくりと味わってみたくなった。」
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